今回は乳がん告知から手術までMockの経験をもとに、どんな選択をすべきか、どんな選択ができるのか、選択肢についてを中心に書きたいと思います。
2022年10月現在、Mockは半年間にわたるいわゆる抗がん剤と言われる化学療法を終えています。
化学療法終了後、分子標的薬のみの点滴が9か月、ホルモン療法の内服薬のみが5年~10年続く予定です。
ここまで治療をしてきて精神的に一番しんどくつらいと感じたのは告知から手術までの時期でした。
癌が自分の体の中にいて、いつ全身に、命を脅かすその触手を伸ばすかわからない。
そんな不安の中、情報を集めて術式や事前準備など考えなければならない、決めなければならないことが山積みです。
しかも、その選択が吉と出るか凶と出るか、その時点では誰にもわからないのです。
主治医にも、家族にも、自分自身にも。
それでも決めなければ手術日すら決定できない場合もあります。
時間はどんどん過ぎていく。
丁寧に決断を下したい気持ちと、早く手術日を決めないと転移するかもしれないと焦る気持ちと。
そんな葛藤を少しでも軽くできればと、Mockの経験から得た情報をまとめます。
※ガン治療は、状態によって先に手術をする場合、抗がん剤でガンを小さくしてから手術する場合、手術できない場合などさまざまです。
目次
手術までに決めること
全摘出?温存??
これはしこりのある位置や大きさ、広がりに大きく左右されるので、患者の希望を聞くことなく主治医の先生が決定されることもあるかと思います。
しかし、主治医の提案も聞きながら最終的に患者本人が決めることもできるはずですので、気になる方はしっかりと先生の話を聞き、自分でも調べてみてくださいね。
Mockの思うメリット・デメリットは以下の通り。
全摘出の場合
●全摘出のメリット● 局所再発の不安がほぼない 術後の放射線治療が不要(リンパ転移がない場合)
●全摘出のデメリット● 健康な部分までなくなる 傷が大きい 傷が正面にできる
全摘出術のメリットについて、1つ目は「局所再発の不安がほぼない」です。
”ほぼ”と書いたのは、胸を全部取っても残った筋肉や脂肪の部分に再発することが稀にあると聞いたからです。どのくらいの確率かはわからないですが、滅多にないとのことでした。
2つ目は「術後の放射線治療が不要」です。
乳がんの手術では通常、手術中にセンチネルリンパ生検を行います。
これはリンパ節の中で乳腺からリンパに流れる一番最初のリンパ(リンパ節の門番みたいなイメージ)を数個取って、すぐに検査に出します。
結果は術中に伝えられ、センチネルリンパにがん転移がない場合と、あってもその数が規定の範囲内の場合は、リンパ節の切除は行われません。(リンパ節切除のデメリットの方が大きいからです。)
全摘出でリンパへの転移がなければほとんどの場合、放射線治療は行われません。
あっても規定の範囲内でリンパ切除を行わなかった場合には、残念ながら全摘出でも術後の放射線治療はしなければなりません。
また、そもそもがんがどの場所にいたかによって、乳房を全摘出しても取り切れていない可能性があるなど主治医の判断で放射線治療が行われることがあるかもしれません。
この放射線治療の要・不要はMockの判断に割と大きく影響しました。
放射線治療は、施術時間は数分とあっという間だそうですが、1~2か月間、平日は毎日病院に通わなければいけません。
大きな病院で手術をして、おうちの近くのクリニックを紹介してもらってそちらに通われる方もいらっしゃるようですが、それでも必ず毎日通わなければならないのは体にも時間的にも負担ですよね。
Mockは事前の検査で「リンパへの転移は恐らくないだろう」という結果も含めて判断しましたが、このメリットを狙って全摘出を選択した場合も、センチネルリンパ生検の結果などでその後に放射線治療が必要になる場合もありますので覚悟が必要です。
反対にデメリットの 1つ目は「健康な部分までなくなる」です。
これが自分や子どもの心にどう影響するか、正直やってみるまでわかりませんでした。
子どもたちには「ママのおっぱいはあなたたちに十分母乳をあげてくれて、役目を終えたもの」、「中に悪いものができたから取ってもらった」と明るく説明しました。
結果的には子どもたちにも自分自身にもそれほどマイナスの影響はなく、大きな意味での”多様性”を感じられ(いろんな人がいる、体の一部がない人がいても当たり前という感覚)、良かったようにも思いました。
ただ、これについては元の胸の大きさによってずいぶん変わってくると思います。
胸の大きな方であれば、全摘出して片方だけになると体のバランスを崩して腰痛を起こすこともあるそうです。
また、見た目についても、MockはパッドなしでUNIQLOのブラトップを着るだけでごまかせてしまうのですが、大きな方だと同じような大きさ、重さのパッド、それをうまく支えてくれるブラなども探さないといけないかもしれません。
2つ目、3つ目のデメリット「傷が大きい」、「傷が正面にできる」についても、毎日、鏡の前に立つと大きな傷を見て悲しくなるんじゃないかと夫がとても心配してくれていましたが、元の生活に戻ればそんなことを気にしている余裕もなく、正直「どっちでもいい」という感覚で過ごせていました。
温存の場合
●温存のメリット● 健康な部分は残る 傷が小さく済む場合がある
●温存のデメリット● 局所再発の不安が残る 術後の放射線治療が必要 再建しなければいびつな形になる場合がある
Mockの場合、主治医からはもともと、「癌を中心に乳房の約半分を摘出し、温存術を行う」と伝えられました。
が、そもそも、女性はみな「少しでも残したい」という考えからでしょうか、「温存できますよ」というニュアンスでした。
ただ、半分取ってしまえば形はかなり崩れてしまうので、温存するなら再建とセットで考えることをお勧めしますとのことでした。
でも・・・
1つ目のデメリット「局所再発の不安が残る」のです。
せっかく時間も費用もかけて(痛い思いもして)再建手術まで受けたのに、すぐに再発してまた手術で残りを取ることになったら?
これは一番つらいパターンですよね。
Mockは再建するなら「自家組織再建」と考えていたので、背中の筋肉を取って、胸とは別に背中にも傷ができて、それで再発しましたとなれば「取り損」だなと考えました。
2つ目「放射線治療が必要」
これは上述している通り、退院後に、数分の治療のために毎日病院に通うことになります。
人によって程度はずいぶん違うようですが、副作用に悩まされることもあるようです。
何度も何度も迷いましたが、最終的には
子どもたちのことを考えると、自分の体の形ぐらいのことで入院や手術を繰り返すことはできない、というのがMockの結論でした。
これはもうそれぞれの大事にするところと、どこに時間やお金をかけられるかというところにもよります。
例えば、お仕事を長期的に休むことができ、しっかりした保険にも入っている、お世話しなければならない人もいないような状況の方なら、この機会に理想の胸を目指して総合的に考えることだってできますよね。
Mockも最初は、左右どちらもガンなら、インプラントで若いころのようなきれいな胸にできるかも!と超ポジティブに考えたこともありました。
右側にも怪しい石灰化がいると言われているものの、まだガンかどうかはっきりさせる検査さえ受けられないレベルなのだそうで、残念ながら、その時点で再建するなら残った右側に合わせた形になるので、そんな夢はすぐに消え去りましたが。
再建する?しない??
これまた難しい選択です。
方法に加え、タイミングも考慮に入れると実に様々な選択肢が出てきます。
同じ病院に再建を担当する形成外科が存在するかどうかにもよります。
再建したいから形成外科のある病院を選ぶこともできますが、転院するとなるとそれだけ手術の日が先送りになる可能性が大きいことも覚えておかなければなりません。
タイミング
●一次再建のメリット・デメリット● メリット 入院・手術が一度で済む(インプラント再建の場合は何度か手術が必要です。) 乳房喪失感がない デメリット 再建手術についてじっくり考える時間が少ない
●二次再建のメリット・デメリット● メリット ガンの治療を終えてから再建についてじっくり考える時間を取れる デメリット 再建手術までの期間は乳房喪失感がある、またはいびつな形のまま 複数回の入院、手術が必要 入院、手術費用もかさむ
タイミングについては、一次再建(同時再建)か二次再建の2種類があります。
一次再建は、乳がんの切除手術と同時に行います。
二次再建は、乳がんの手術を終え、一定期間を置いた後に行います。
一次再建では入院・手術の回数が少なくて済みますし、目が覚めると再建されていますから、乳房の喪失感を味わうこともありません。
ただし、自家組織再建では通常1度の手術で済みますが、インプラントの場合は一次でエキスパンダーという装置を入れ、その後、一定期間を置いてから再度、手術をする必要があります。
それでも、エキスパンダー挿入が乳房切除と一緒に終わるので、1回分、手術の回数が減ることには違いありません。
二次再建のメリットはなんといっても「じっくり考える時間が取れる」ということに尽きると思います。
ガンのことを考えると、再建のことにまで頭が回らない、という方は多いかもしれません。
しばらくして落ち着いたら、でもいいですし、十年以上経ってからでもできるものですので、無理せずにゆっくり検討するのも一つの手です。
ただし、放射線手術をすると皮膚が固くなってしまうので、再建できる、できないなどの制約が出てくることもあるようです。
総合的に主治医の先生とよく話し合うことが大切だと思います。
再建の方法を見ていきましょう。
再建方法
再建には、自家組織を使う方法と、インプラントを入れる方法があります。
自家組織再建では、背中の筋肉を使う方法と、お腹の筋肉や脂肪を使う方法があります。
インプラントの種類もいくつかあるようですが、方法としては種類によって変わりはないと思われます。
お腹を切る手術は高度な技術が必要で、対応できる病院は少ないそうです。
また、傷跡は30~40センチと大きめです。
背中を切る方法は、神経がつながったまま脇を通して胸に持ってくるというもので、比較的簡単なのだそうです。傷跡は10センチ程度。
ただ、胸の大きな人は背中の筋肉だけでは足りないのでお腹の脂肪を使う方法しか選択できない場合もあるようです。
Mockの場合は、胸も小さいですが背中の筋肉も少なかったので、足りない分は太ももの脂肪を注射器のようなもので吸引して足す、という予定でした。
やるなら一次再建、それをしないなら再建はしない!と思っていたMockですが、手術から1年近くが経ち、いつか再建手術をしようかなぁとぼんやりと考えだしました。
銭湯や温泉、スイミングプールなどで、見えてしまうと自分が恥ずかしいとか、かわいそうと思われたくないとかいう気持ちはまったくないのですが、相手が困るかなぁ、嫌かなぁと気を遣ってしまいます。最近はそれがとても面倒に思えてきました。
エピテーゼ(取り外し可能な人口乳房)なども視野に入れつつ、ゆっくり考えたいと思っています。
遺伝子検査する?しない??
これまた悩むところです。
しなければサッサと手術に進めますが、するとなるとその分手術が遅くなる。
また、保険適用には条件があるのですが、条件に当てはまって健康保険が適用されたMockでも6万円以上の自己負担費用がかかっています。
そして私には娘が2人。もし遺伝性なら、遺伝する可能性は1/2とのことでした。
それなら分かっていた方が早い時期から毎年検査してあげられる!と考えたのですが、主治医からは、
「もし遺伝だということになれば、結婚などに影響することもあります。相手に伝えるかどうかなども、悩むことになるかもしれません。」
とのお話が。
なるほど。その考えはなかった。
でも・・・
なりやすい遺伝子が遺伝していてもならない人もいる。
遺伝性でなくても(結局Mockもそうでした。)なる人はなる。
他にもいろんな病気があって誰しもがいつどこで発症するかわからない。
という状況で、「乳がんになる「可能性が人より高い」から結婚はできません。」、という判断を相手がされるなら、それは縁がなかったということではないかなと思いました。
実際にそうなったら娘たち本人たちがどんな気持ちになるか、どう考えるかは想像するしかなくわからないのですが、自分ならどうだろうと考え、やっぱりわかっていて早くから備えができるのならその方がメリットは大きいと考えました。
また、遺伝性なら再発を見越して必ず全摘する、と夫と決めていました。
しかし陰性でしたが結局その他のことも考慮して全摘を選択しました。
その他にもさまざまな検査があり、主治医の先生によって勧めてくれたり情報もくれなかったり。
もちろん、その患者さんの状態に合ったもの、必要かもしれないと思ったものを選択して伝えてくださるのでしょうが、先生の判断がいつも正しいわけではありません。
それ、手術前に知っておきたかったぁ!という情報を後で耳にすることもあると思います。
その結果が大事に至らなければ良いのですが、先生にとって大したことでなくてもその患者にとってはとても大きなこと、という場合もあります。
しんどい時ではありますが、後悔のないようにしっかり調べるのも大切かもしれません。
大丈夫!
乳がんは早期発見ならほぼ治ります!
自分のために、大切な人のために、冷静に一緒に前を向いて乗り越えて行きましょう。
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